タネの発芽と
光の関係

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タネの発芽に光は必要?不必要?

タネは通常土の中にまきますから、発芽に光は必要ないと考えるかもしれませんが一概にそうとは言えないのです。実は植物には光がタネの発芽を促進する種類と、逆に光を必要としない種類があるのです。そして光が発芽を促進する種類を好光性種子(または光発芽性種子)、光を必要とせず、暗い方が発芽の良い種類を嫌光性種子(または暗発芽性種子)と呼び区別しています。特に農作物に関しては種類ごとの性質を知っていないと、うまく発芽を揃えることができません。今回はタネの発芽と光の関係についてお話しします。

好光性種子の発芽について

好光性種子には、レタス、シソ、セロリ、シュンギク、ミツバ、ゴボウなどがあります。発芽に光が必要ですから、タネをまいた後に土を厚くかけてしまうとタネに光が届かないので発芽が抑制されます。この好光性種子の代表としてシソを使って実験した結果を示しましょう。

タネまき用のトレーに育苗用の培土を詰めて1cmの深さのまき穴をあけ、“ちりめん青しそ”のタネをまきます。半分には覆土をしっかりして、残りの半分は覆土をしないでそのままにしました(下の写真右半分の茶色になっているのは、バーミキュライトで覆土したためです)。

タネが流れないように底から水を吸わせて水をやり発芽させたところ、上の写真左半分の覆土しなかった方はほぼ規定の発芽率を示しましたが、右半分のしっかり覆土をした方はわずかしか発芽しませんでした。

覆土に使った土の影響があるのではと思うかも知れませんので、更に実験的に光の条件だけを違わせた発芽試験をしました。同様に“ちりめん青しそ”を使ってシャーレにタネをまいて水を与え、一方は黒い布で暗くして光を遮り、もう一方はラップで光を通すようにしました。

数日後に観察したところ・・・

ご覧のように写真左側シャーレの明条件区ではしっかり発芽していますが、右側シャーレの暗条件ではほとんど発芽していません。

このようにシソでは発芽には光が必要です。実験のように全く覆土をしないと水をやる時に大変神経を使いますから、実際のタネまきでは覆土をする必要があります。しかし光が届くよう土はごく薄くかけ、水やりの時にタネが水の勢いで流れてしまわないようていねいに水をやりましょう。

上の写真は、“ちりめん青しそ”のタネをすじまきにして、左側2列はごく薄く土をかけ、右側2列はしっかりと土をかけて栽培した様子です。今までの実験結果と同じく、土をしっかりかけた方が発芽率が悪いことが分かります。

シソについては「タネはきちんとまいたのですが発芽しないのですが・・・・」と言った問い合わせが良くあります。おそらくこのようなお客様は、今回の実験のように”しっかり”と土をかけてしまっている可能性があります。

嫌光性種子の発芽について

嫌光性種子の代表例はダイコンです。ダイコンを使った実験の様子を見てみましょう。水を浸したろ紙を敷いたシャーレにダイコンのタネをまきます。一方はアルミホイルで光を遮断し、一方はラップで包み光が入るようにします。光の条件だけが異なるようにします。

下の写真は数日後の様子です。写真左側の明条件のシャーレでも発芽しているようですが・・・・・

写真右側のアルミホイルを取ってみたところ・・・・

明らかに光を遮っていた方が良く発芽しています。比較してみると明条件では根はわずかに出ていますが伸長することなく、葉もまだタネの皮に包まれたままですが、一方の暗条件では根も茎も伸びて子葉もタネの皮から出てきています。

実際の畑でタネをまいた時に土をかけなかった条件としっかりと覆土した条件とを比較してみました。

上の写真左列はまき穴をあけてタネを落として覆土をかけず、写真右列はしっかりと土をかけました。左列は全てが発芽している訳でもなく、また発芽したようでも葉の展開もありません。一方右列の土をしっかりかけた方は全て発芽して、子葉もきれいに開いています。

タネが発芽力を持っていても、しっかりと生育するためには光を遮るように適当な深さにタネをまく必要があることが分かります。

通常タネまきはタネの大きさの約2倍の深さが適当とされていますが、ダイコンの場合は光が届かないよう約1cmの深さにまき、その後の雨や水やりなどで土が流れないように手のひらで軽く押さえるのが良いでしょう。

その他の嫌光性種子には、ネギやタマネギ、ニラなどネギ属の植物や、ナスやトマト、トウガラシなどナス科の野菜があります。

タネを使って自由研究

今回はタネまきトラブルでよくある問い合わせからシソやダイコンを取り上げましたが、色々な野菜のタネを使って発芽の実験をしてみると面白いかも知れませんね!

これはトマトを使った発芽実験の様子です。

トマトも嫌光性種子に含まれます。左は植穴にタネをまいただけで覆土はしなかったポット、右は覆土をしたポットです。いずれも1ポットに3粒ずつタネをまきましたが、覆土をした方はほぼ発芽しているのに対して、覆土しなかった方の発芽はまばらです。

このようにポットと育苗用の培土を使って簡単な実験をすることで、時間的にも短期間で光との関係だけでなく温度や水分との関係などを調べることができます。またタネの発芽の様子なども観察してみるとまだまだ発見があるかも知れません。夏休みなどには子供さんと一緒にタネを使って自由な発想で研究してみませんか?

好光性種子の仲間

嫌光性種子の仲間

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